これまでの総括と中長期展望

前中期経営計画の振り返り

コマツは2013年4月から2016年3月までの3カ年にわたり、中期経営計画「Together We Innovate GEMBA Worldwide」に取り組んできました。

この間、新興国の成長鈍化や資源価格低迷の影響を受け、建設・鉱山機械の需要は、我々の想定を大幅に下回る状況が続き、特に鉱山機械の需要は、2012年度の約3割の水準まで落ち込みました。

このような状況のもと、コマツはコストの削減や固定費の抑制といった構造改革を加速するとともに、中期経営計画の中核である「将来の成長に向けた種蒔き」を着実に実行してきました。

これからの経営課題

現在のコマツを取り巻く経営環境を見極める上で、まず重要なものとして建設・鉱山機械の需要や、産業機械の需要が挙げられます。

特に売上の90%を占める建設・鉱山機械の需要は、2016年以降も当面、非常に厳しいのではないかと見ています。「需要が厳しい中、我々はどのように成長を目指すのか?」これが第一に考えるべき課題です。

成長のキーは、やはり「現場」の課題の解決であると考えています。現場の課題は国・地域、あるいはお客さまの業界によって異なります。しかしながら技能労働者の不足、あるいはIoTの進歩、そしてお客さまの現場での安全性、生産性、環境性の向上、あるいは機械の生涯を通じてのトータルコストの低減などが、主要な課題になっていると考えられます。

また、環境、社会、そしてコーポレート・ガバナンスといった「ESG」に関する社会的な期待はさらに高まっています。

このような経営における課題についても大いに意識しながら、今後3年間を進めていく必要があります。

Our Surrounding Environment and Tasks

新中期経営計画のスタート

section_img01

建設・鉱山機械の需要は、当面の間、新興国を中心に調整局面が続くことが予想されます。しかしながら長期的にみれば、世界人口の増加、新興国を中心とした都市化率の上昇により、土木・建設工事の機会や鉱物資源の所要量も増加し、それに伴って建設・鉱山機械の需要も持続的な成長が期待できるものと認識しています。

産業機械につきましても、自動車業界ならびに半導体業界において生産設備投資の増加が見込まれることから、今後数年にわたり多少の変動はあるものの、堅調に推移する見通しです。

このような認識を前提に、2021年の創立100周年を見据え、そして、それ以降も持続的な成長を目指すため、業界水準を超える成長を目指すのが、2016年4月からスタートした新しい中期経営計画「Together We Innovate GEMBA Worldwide – Growth Toward Our 100th Anniversary (2021) and Beyond –」です。

section_img02
世界人口と都市化率

新中期経営計画のあらまし

経営目標

経営目標

今回の中期経営計画における経営目標は右図の通りです。

「収益性」「効率性」「株主還元」「健全性」に加え、「成長性」を新たな経営目標の指標に設定しました。

またリテールファイナンス事業を新たな事業セグメントとして独立させ、透明性を高めます。

なお新中期経営計画の初年度となる2016年度の連結業績見通しはリンクの通りです。

株主還元(配当)について

過去3年間でリテールファイナンス事業を除く事業部門の借入金は計画通りに削減しました。今後の資金の使途については、成長のための投資を主体としながら、自社株買いを含む株主還元に一層配慮します。具体的には連結配当性向を40%以上とし、60%を超えない限り減配はしない、との方針です。

年間配当金は、当期と同額の1株当たり58円を予定しております。これにより連結配当性向は59.4%となる予定です。

経営戦略

中期経営計画の基本戦略

前中期経営計画においても、コマツは「イノベーションによる成長戦略」「既存事業の成長戦略」「土台強化のための構造改革」の3つの経営戦略を定め、活動を推進してきました。新しい中期経営計画においても、引き続きこの3つの経営戦略のもと、将来の成長に向けた種蒔きに注力し、需要が停滞する中でもコマツグループの強みである「IoT」のさらなる活用などにより成長を加速させます。

コマツのIoTで、お客さまの現場、代理店の現場、協力企業も含む生産現場の全体をつなぐことで、全ての現場の安全と生産性の向上を図り、これまで以上にお客さまにとってなくてはならない存在になることを目指します。

ESG(サステナビリティ)

ESGへの取組みの強化

コマツグループでは、従来からESG、つまり「E:環境」「S:社会」「G:企業統治」の各分野に積極的に取り組んできました。ESGの重要性は、ますます高まっています。今回の中期経営計画でも、このESGを強く意識しながら「環境」「社会」「企業統治」のESGの各分野に積極的に取り組んでいきます。
(注)「E(Environmental):環境」「S(Social):社会」「G(Governance):企業統治」

環境保全活動

環境保全における重要なテーマとして二酸化炭素(CO2)排出量の削減があります。建設機械のライフサイクル(右図)において、製品の使用中のCO2排出量はライフサイクル全体の約90%を占めています。環境を意識した製品の開発(燃費性能の向上、ICTの活用など)により、お客さまが建設機械を使用する際のCO2排出量の削減に貢献します。

建設機械のライフサイクル

社会性活動(CSR)

コマツグループは「本業を通じたCSR活動」を基本としつつ、自らの強みを活かした社会貢献活動を行うことで、社会に対する責任を果たしていきたいと考えています。

現在でも、世界各地域のグループ会社において、地域における課題解決のための支援活動を行っています。

例えば、高齢化や新規就業者が深刻な問題となっている日本の農業に対しては、モノ作りのノウハウを活かした支援を行っています。

これからも世界各地域の事情、課題に耳を傾け、グループとして地域に根ざした社会貢献活動を行っていきます。

section_img08
インドネシアの貧困地区に対しては、子供が教育を受けるための奨学金拠出や若者向け職業訓練、雇用機会の提供を行っています。

コーポレートガバナンス、コンプライアンス、リスク管理

コマツは、品質と信頼性を追求し、企業価値を最大化させることを経営の基本としています。「企業価値」とは、我々を取り巻く社会と全てのステークホルダーからの信頼度の総和であると考えています。

この信頼度の総和を高めるためには、業績の向上だけでなく、コーポレート・ガバナンス、コンプライアンス、リスク管理を通じ、経営の健全性と透明性を高めることが重要です。

コーポレート・ガバナンス

すべてのステークホルダーの皆さまからさらに信頼される会社となるために、コマツはグループ全体でコーポレート・ガバナンスを強化し、経営効率の向上と企業倫理の浸透、経営の健全性確保に努めています。2016年4月には、世界のコマツグループ現地の経営トップ層を「グローバルオフィサー」に任命し、グローバル連結経営の強化を図っています。

また株主・投資家の皆さまには、公正かつタイムリーな情報開示を進めるとともに、株主説明会やIRミーティングなどの積極的なIR活動を通じて、一層の経営の透明性向上を目指しています。

コンプライアンス(法令遵守)

社会において企業が果たすべき役割の重要性が高まっている今日、社員一人ひとりが「企業の社会的責任」を十分に自覚し、狭い意味での法令にとどまらず、社会に一般に尊重されているビジネス社会のルールを遵守することが、社会の信頼に応えるために不可欠です。

コマツは「SLQDC」という表現を通じ、「S(Safety:安全)やL(Law:法令遵守)が、Q(Quality:品質)、D(Delivery:納期)、C(Cost:コスト)より優先する」ことを強く意識し、それぞれの業務において法令遵守の徹底に努めています。

リスク管理

コマツでは、当社グループの持続的発展を脅かすあらゆる不確実性をリスクと定義したうえで、特にコンプライアンス問題、環境問題、品質問題、災害発生、情報セキュリティ問題などを主要なリスクと認識し、これに対処すべく対策を講じています。