「機械を買ってもらいたいのではない。 チームを買ってもらいたいのだ」。

「機械を買ってもらいたいのではない。 チームを買ってもらいたいのだ」。

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ハイウェイを降りると、一本道は、地平線までひたすら続いていた。2メートルを超えるサボテンと背の低いブッシュだけが広がっている。空の青色は、東京で見るそれよりも、ずっと濃い。風は、乾いていた。アメリカ アリゾナ州 ツーソン。この一帯は、世界でも有数の鉱山密集地帯だ。400キロ圏内に20を超える銅鉱山が集まっている。

まるで2頭の恐竜のようだと思った。巨大な鋼鉄の手が、鋭い爪を土の壁に突き立てる。太い腕を、一気に振り上げる。ひとすくい60トン。実に4トントラック15台分もの土をダンプトラックに載せていく。ダンプトラックは、がっしりとした背中で土を受け止めると、土煙を上げて走りだした。高さ20メートル近い「ショベル」と積載量300トンを誇る「ダンプトラック」。どちらが欠けても鉱山の仕事は進まないパートナー。だが数ヶ月前まで、2台は別の会社の機械であった。

ミルウォーキーに本社を置くジョイ・グローバル社とトウキョウのコマツ。2つの会社がひとつになり、コマツマイニングがスタートした。いま、文字通りひとつのチームとして仕事に当たっている。「一つになることで、弱みはなくなり、強みは何倍にもなりました」。ミルウォーキーから来た女性の責任者が教えてくれた。ジョイ・グローバル社は超大型積込機のショベルとともに、地下に横穴を掘っていく「坑内堀り」用の鉱山機械をつくってきた。超大型ダンプトラックなどを得意とするコマツとは互いを補うカタチでのパートナーシップになる。「鉱山機械のすべてをラインナップすることになりました。それはつまり、土を掘る、集める、運ぶ、鉱山の仕事のすべてに関わることを意味します。だから、楽しみなんです」。息のあった仕事をつづけるショベルとダンプトラックを見つめながら、彼女は微笑んだ。

一台が走り去ると、タイミングよく次のダンプトラックがあらわれた。実は、この鉱山では、GPSによる位置情報をオペレーションセンターで一括管理。次にどこに行けばよいか、ダンプトラックに指示を出している。オーストラリアの鉱山では、すでにダンプトラックの完全無人走行も始まっている。鉱山の現場は、思いのほか「最先端」なのだ。この鉱山でも、ICTによる無人化・自動化が加速していくにちがいない。

オペレーターたちは、地元ツーソン出身の人が多いという。鉱山に常駐するコマツマイニングのメカニックにとっては、彼らと会話を交わすことが重要な仕事のひとつになる。現場の生の声は、メンテナンスに反映されるだけでなく、本社にも届けられ次の開発にフィードバックされていく。「僕らは機械だけを提供しているんじゃない。メカニックを含めたチームを提供しているんです」という言葉が、印象的だった。

交代の時刻になったようだ。オペレーターが、10メートル上の運転席から地上へと降りてきた。そして、ショベルの大きな手の、ちょうど小指にあたるあたりにそっと触れた。まるで働き者の巨大な相棒に「お疲れさま」と語りかけるように。鉱山で働く男と鉱山で働く機械を、アリゾナの太陽が見つめていた。

日本経済新聞 2017年6月19日(月)
朝日新聞 2017年6月19日(月)
北國新聞 2017年6月19日(月)
フジサンケイビジネスアイ 2017年6月19日(月)
日刊工業新聞 2017年6月19日(月)

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