スペシャルストーリー:コマツならではの環境対策

コマツならではの環境対策 粟津工場の地域社会とのつながり

日本初の国産ブルドーザーを生産したコマツ粟津工場は、1938年以来、周辺地域のビジネスや産業を下支えする役割を担ってきました。
コマツが世界中に展開する9つのマザー工場の中でも特に大きな規模を誇るこの粟津工場は、コマツ全体のスタンダードモデルとなる工場です。今日ではブルドーザーに加え、油圧ショベル、ホイールローダー、モーターグレーダーなどの中小型製品やトランスミッションのマザー工場にもなっています。
近年、粟津工場は地域の持続可能なパートナーとなることを目指した先進的な取り組みを進めています。

日本中で何百万人もの人々が一時的に電気の無い生活を強いられた2011年の東日本大震災を受けて、コマツは電力消費の削減と従来の送電網への依存からの脱却に向けた方策を探り始めました。
そうしてコマツが下した決断は、粟津工場の老朽化した建屋2棟を1つの組立工場として統合するなどして、粟津工場全体の電力半減を目指すというものでした。
2014年に完成した新組立工場の省エネ機能は、それまでの工場をはるかに上回るもので、代替エネルギー源と最先端の設備デザインを組み合わせることにより、電力消費を90%削減することに成功しました。

この新組立工場の建設にあたり、コマツは地域産業の振興のためにも、様々な地域パートナーと協同して事業を展開しました。
現在、お客さまや取引先、地元の学校等からこの新組立工場への見学ツアーの申し込みを多くいただいています。

「こんなに小さな町ですが、コマツの存在はとても大きいです。」長年のビジネスパートナーである板尾鉄工所社長の板尾昌之さんは言います。「粟津工場がこの地にあることを誇りに思っています。」
主要な電力削減メカニズムの一つであるバイオマス発電システムは、石川県において雇用創出と設備投資につながる新たな産業を生み出しました。
「これは粟津工場の生産改革を進める上で、特に重要な意味を持つ取り組みの1つでした。」生産技術部管理課の課長である戸井良広は続けます。「私たちは環境面の持続可能性だけでなく、周辺地域の持続的な発展にも寄与する設備を生み出すことを意識しました。」

かが森林組合は、バイオマス発電システムに必要な木材チップを粟津工場へ供給することを2014年にコマツと合意して以来、地域林業の発展を支える木材チップ生産設備をフル稼働させています。木材チップは、粟津工場のバイオマス発電施設で燃やされ、発電のための高圧蒸気を作り出すとともに工場内の暖房や冷房に使用する水の過熱・冷却にも活用されています。
かが森林組合は、農業用水を確保し、流木による河川氾濫を減らすため、石川県南部において材木の伐採と収集、および適切な保全を行っています。このような事業は、天然資源の健全性維持にとって非常に重要ですが、切り出した木の少なくとも30%は建築・販売用途に活用できていませんでした。

しかし、現在それらの木材残滓はバイオマス発電用の木材チップとして粟津工場にて有効活用されています。
「今まで使われていなかった丸太も今は使い道があります。エネルギー源と新しい仕事を創出しているのです。」かが森林組合代表理事専務の清水正明さんは言います。

コマツは、株式会社タガミイーエクスと協同し、粟津工場で必要とされる量を生産できる木材チップ生産設備の開発も行っています。取締役会長の田上好道さんは、コマツとのパートナーシップは地域林業の成長に必須だと指摘しています。
社長の田上好裕さんも「コマツが林業の発展に配慮してくれたことをとても感謝しています。地域全体の産業活性化につながりました。」と言います。

木材チップ設備の開発をコマツから打診された当初、田上さんはコマツが求めているレベルの事業サポートは実現できないと考えていたそうです。しかし、コマツと協同して設備の新規開発に取り組む過程で、コマツの熱意を感じ取り、このことが本事業の成功につながりました。ビジネスパートナーとしての関係性に留まらず、持続可能な技術の開発をともに生み出す協力者としての関係性を構築したことが双方にとっての成功に結びついたのです。
「そのような関わり方のおかげで私たちも意欲的に取り組むことができました。私たちの機械が生産する木材チップによって、地域の環境保全につながる活動に貢献できるということ。このことがわかったから続けることができたのです。」

粟津工場にバイオマス電力を導入することは、実現性やコストといった懸念事項をはるかに超越した検討を重ねた上での戦略的な決定でした。
同時に、それはコマツが地域社会とともに歩んでいくことを謳った創業者精神に則った選択でもありました。
「バイオマス施設は実務面ではとても取り扱いが難しい設備です。」バイオマス発電設備のプロジェクトマネージャーである三谷典夫は言います。「設備を運用するには相応の材料を使用しなければならず、さらに収益性についても考慮しなければなりません。重油ボイラーを使用する方がずっと簡単です。」

「バイオマスの取り扱いは困難ですが、私たちはそれを使用することで地域社会の発展と地域の森林環境などの保全に貢献したいと考えています。」
このプロジェクトでは、地域社会との調和の精神に則って、コマツの若手社員が設計や計画立案、実務の遂行に率先してあたっています。彼らより上の世代の社員は、その提案の評価や進捗管理などを通して彼らをサポートしています。

エネルギー消費の削減を可能とするもう一つのカギは、作業フロアの上下3メートルずつを暖めたり冷やしたりする冷暖房システムです。従来の空調システムは、18メートルの高さがある施設全体に冷気や暖気を行き渡らせることでエネルギーを無駄に浪費してしまっていました。しかし粟津工場の新組立工場では、地下水と地熱を利用したファンやポンプ、ラジエータを用いて空気を上下6メートルの範囲で循環させ、電力消費を必要最小限におさえています。

コマツはまた、効率性を最大化させた作業フロアを設計することでエネルギー量の削減も図っています。組み立てラインの床板をゆっくりと前に進めることで、組み立てる機械とツールボックスの間を往復する時間ロスを最小化し、その結果、面積あたりの生産性二倍アップを実現しました。作業員は、ツールボックスをゆっくりと前進する床板の上に置き、自分も一緒に移動することで組み立て工程に集中することができます。
新たな天井クレーンの導入もエネルギーの30%削減に貢献しています。クレーンを降ろす時に生じるエネルギーを電力に変換するこのシステムは、油圧ショベルで使用されている省エネ技術から着想を得ました。

また、ホイールローダーの走行試験設備で使用されるローラーによって生み出された電力も、工場の電力システムにフィードバックされています。そして、電力消費を大幅に削減することで持続可能性への貢献を進める粟津工場の取り組みを屋上ソーラーパネルが手助けしていることも見逃せません。

コマツは、粟津工場の中だけでなく、その周辺の地域にも幅広く目を向けながら、長期的な成長に必要なものづくり精神を具体化していく考えです。私たちがものづくりについて語るとき、それは言葉通りに生産現場で行われる「物作り」のみを指すわけではありません。私たちはコマツグループ全体、社内の各部署や外部のパートナーすべてによるチームワークのことも含めてものづくりという言葉を使っています。
「仕事を行う上で、自ら限界を決めてはいけません。」粟津工場で実の娘とその夫である義理の息子とともに働く仲泉千鶴は言います。「全体の流れを理解しないといけません。」

自身の夫も中国のコマツ現地法人で働いているという仲泉は、環境に配慮し、持続可能な社会の流れに真剣に取り組んでいる会社で働いていることを誇りに思っていると言います。「この工場のバイオマス施設では、間伐材を活用することで機械が稼働し、それがさらに環境にも貢献するという良いサイクルが循環しています。」

地域と環境をつなぐこれらの「支援の輪」は、粟津工場における持続可能性に向けた取り組みをコマツのみではなく、地域社会全体のサクセスストーリーとして成立させているようです。
「粟津工場は地域の人々とともに成長できています。」三谷は続けます。「私たちは地域の皆さんのおかげで成長できました。それにお返しすることは私たちの義務です。これからも地域と密接なつながりを持つグローバル企業であり続けたいと考えています。」

バイオマス施設のオペレーションについて

  • 木材チップは石川県南部の森林から得られた木材残滓から生産
  • 燃料となるチップはかが森林組合から粟津工場のバイオマス発電施設に供給
  • 施設内のメインサイロは130立方メートルを貯蔵可能(約24時間の稼働分)
  • チップは4つのボイラーシステムに分配され、4つのサブサイロにコンベヤーで運搬
  • 木材チップはサイロで燃やされ、上記の発電プロセスを経るとともに、工場内トの冷暖房設備に用いる水の加熱と冷却にも活用される