アジア各地で鍛える「現場」の力

アジア各地で鍛える「現場」の力
フィリピン・セミララ鉱山

コマツは、全世界のグループ社員、販売代理店および協力企業などのパートナーが一体となって、お客さまの現場で、お客さまとともに現場の安全性や生産性の向上に取り組み、お客さまにとってなくてはならないパートナーとなることで、コマツを成長させることができると信じています。

このような顧客重視の活動をコマツは「ブランドマネジメント」と呼び、それぞれの現場の活動に導入しています。

*文中敬称略

‟チームワークを通じて、お客さまとの信頼関係を高めています”

コマツ 建機マーケティング本部 サービス本部 マニラ・サービスサポートセンタ
テクニカルアドバイザー アーマド・ファウジ・スチプト

鉱山の現場経験を積み重ねる

ファウジは2000年、コマツのインドネシア代理店「ユナイテッド・トラクター社」に入社し、大型油圧ショベル「PC3000」の専門家としてサービス技術者の育成や、サービス契約専任の総括業務を担当してきました。2009年9月のコマツ入社以降は、フィリピンにあるセミララ・マイニング社の鉱山の現場に駐在し、テクニカルアドバイザーとしてサービス業務を担当しています。

「私たちの仕事はプロダクトサポートを通じて、お客さまの満足度を高めることです」とファウジは語ります。「満足度を左右するのは、車両の稼働率とメンテナンス用部品の的中在庫率、つまり『必要なときに必要な部品がすぐに用意できる』ことです」。

お客さまと深く関わる

彼は日本から赴任している同僚とともに、車両の故障を未然に防止し、稼働率を最大にする活動に携わっています。活動は広範にわたり、車両メンテナンスの支援、現地代理店「マキシマ・マシナリーズ社」やお客さまに対する技術トレーニング、KOMTRAX Plusの稼働データ解析に基づくトラブル回避策の提供、マキシマ社の部品交換計画や、機械点検に対するサポートなどがあります。

毎週土曜日には油圧ショベルに関する会議を行い、さらに月2回、機械のサポートをテーマとする会議を開催し、お客さまとマキシマ社、そしてコマツの関係者が一堂に会して、車両についてだけでなく、鉱山業務に関するあらゆる事項を話し合います。「会議では、全ての情報が共有されます。お客さまの運転手の省燃費運転の評価を、私たちがすることもあります」とファウジは説明します。「データ分析をもとに提案も行います。例えば、磨耗に強い足回り部品をお客さまに試験的に使っていただき、結果を分析し提案します。それから全員で次のステップを検討するのです」。

お客さまと深く関わる

‟質・量ともにリマン業務を強化しています”

コマツリマン・インドネシア(株)(KRI) 社長 ルディ・クルニアント

リマン工場の活動

「コマツの強みはカイゼン。その基礎はPDCAを回す品質管理にあると確信しています」とクルニアントは語ります。彼は1991年、コマツにおけるアジア初の生産合弁会社であるコマツインドネシア(株)に入社しました。それから22年間コマツ流の生産に関する経験を積んだクルニアントは、2013年、リマンコンポーネントをグローバルに供給するKRIのマーケティング部長に就任しました。

リマンは「再製造」を意味し、使用済みのエンジンや油圧機器などのコンポーネントをさまざまな工程を経て新品同等の品質に蘇らせることをいいます。再生コンポーネントは定期交換などの際に載せ替え、新品同等の品質と性能を保証しつつ、新品より割安で、リユース・リサイクルによる資源の節約にも貢献します。

QC活動を導入

「KRIは2007年に設立されたばかりの、インドネシアのコマツグループで最も『若い』会社です」とクルニアントは振り返ります。「着任してすぐ、KRIにコマツの品質管理手法を定着させなければならないと感じました」。

クルニアントは、マザー工場(小山工場)出身の中村大樹とともに、KRI全社員に対し、QCを初歩から徹底して教育する活動を立ち上げました。QCサークル作りや年2回のQC大会開催、そして2014年にはQCの基礎が社内に定着したことを受けて、次のステップとして‟積極的に先手を打つ”会社を目指す活動を開始。代理店やお客さまへのサポート力を強化するため、本来は工場であるKRIの社員が、代理店やお客さまのもとに出向き、課題を発見し、カイゼンに取り組んでいます。

リマンのお客さまである鉱山会社では、この数年間、生産を維持しながら設備投資を抑制しており、この傾向は今しばらく続くと見ています。「お客さまが高い生産性を維持するためには、リマンの重要性はますます高まるでしょう」とクルニアントは考えています。

コマツグループが世界中で地位を高めていくため、より高品質なリマンコンポーネントを、お客さまの望むかたちでフレキシブルに供給する――。KRIはその実現を目指して、万全の体制で臨んでいます。

QC活動を導入

‟インド建機市場の拡大に対応し、増産準備を進めています”

企画・管理部 シニアマネージャー ハリ・J・クリシュナン
シニアマネージャー ハリ・J・クリシュナン

新工場の設立と生産移管

17年以上にわたり自動車メーカーで生産管理に携わってきたクリシュナンは、2006年、KIPLに入社しました。以来、企画・管理部で初の現地社員として「販生(販売および生産計画)」やコスト管理、在庫管理を担当しています。また、KIPLダンプトラック生産工場の立ち上げに続き、今回、2015年5月に操業を開始したKIPLチェンナイ新工場への油圧ショベル生産移管に携わっています。

生産移管は2013年4月に始まり、2016年9月に完了する予定です。インドでは、長年、ラーセン&トゥブロ(L&T)社がコマツ商品の生産・販売・サービスを担ってきました。2013年4月以降、インドでのさらなる成長を目指して、生産はKIPL、販売・サービスはL&Tが担当し、それぞれの強みを活かす体制の構築を進めています。このうち油圧ショベルの生産は、L&Tの子会社「LTCEL社」から、6トンから20トンクラスの計5機種の生産をKIPLに移管します。クリシュナンは「需要に応じた月次販生計画を立案・達成しつつ、KIPLとLTCELに生産量を均等配分するのは大きなチャレンジでした」と振り返ります。平行して、KIPLでは地域ニーズに対応する油圧ショベルPC210-8M0の生産に着手し、加えて生産全機種にKOMTRAXを標準装備しました。

インド経済圏の成長

2015年下期以降、インド、ネパール、ブータンでは油圧ショベルの需要が前年同期比で約20%増加しています。KIPLでは日本のマザー工場の協力を得て、2015年12月から2016年2月の短期間に、油圧ショベルの生産量を倍増する活動に注力しました。「私たちはインド需要の拡大見通しに大いに喜んでいます。生産移管も前倒して完了する予定です。現在、最優先課題は、為替リスクを軽減するために、国内(現地)生産比率を更に高め、原価低減を達成することです」とクリシュナンは語ります。

油圧ショベルの生産移管が進み、増産に向けた準備が進むKIPLチェンナイ工場
油圧ショベルの生産移管が進み、増産に向けた準備が進むKIPLチェンナイ工場

‟インド建機市場の回復をとらえる体制は整っています”

マネージャー クリシュナ・クマル
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インド「プレミアム市場」での販売促進

建機業界のマーケティング経験が豊富なクマルがKIPLのマーケティング部アシスタント・マネージャーとして入社したのは2010年です。

コマツは、インド油圧ショベル市場において、高品質・高性能・高効率の機種を求める「プレミアム市場」に特化し、マーケティング活動を推進しています。この市場をターゲットに、KIPLはL&T社と連携して多角的な販促活動を展開してきました。例えば「キャラバン・デモ」では、油圧ショベルをトレーラーに載せてインド全土で展示し、コマツ製品の認知度が低い地域では実機デモを行います。営業、サービス、部品担当のスタッフも同行し、機械の特長やコマツ機導入のメリットを正確かつ魅力的に説明するのです。

「種を蒔く」活動

クマルはインドにおける幅広いマーケティング活動に関わっています。そのなかには例えば、1)建機の需要予測、2)最適在庫とスムーズな納品を両立するための工場・代理店間の調整、3)ライフ・サイクル・コスト(LCC)に着目した販促活動の提案、4)現地市場ニーズに対応した新機種の導入、5) KOMTRAXの活用促進(PR、トレーニング、データ分析)などがあります。

クマルは、インドにおけるコマツ製品の市場シェア向上には何が重要なのか考え、仕事に取り組んでいます。「油圧ショベルの需要が落ち込んだ過去2年間に、私たちはシーディング(種を蒔く)となるさまざまな活動を続けてきました。今日、インド経済の伸長を背景に、インフラ整備工事が増え、油圧ショベルの需要も増加しています。今後2年間、蒔いた種が実り、果実を収穫する時が来るはずです。すばらしい日々が楽しみです」と、クマルは新たな自信を語ります。