お客さまとともに歩む

~スマートコンストラクション導入現場レポート~

お客さまとともに歩む ~スマートコンストラクション導入現場レポート~

コマツはお客さまの稼働現場に入り、お客さまとともに、お客さまの現場の安全性、生産性を向上する新しい価値の創造(イノベーション)を通じ成長することを基本戦略と位置づけています。

その「イノベーションによる成長戦略」の一つが「スマートコンストラクション」です。UAV(無人ヘリコプター)による高速・高精度な現況測量や、作業機を自動制御できるICT建機など、建設・土木現場の全てをクラウドプラットフォーム「KomConnect(コムコネクト)」で有機的に結びつけるスマートコンストラクション。ICT建機の機能を活用した現場の安全性・生産性の大幅な向上に加え、KomConnectの機能を活かした最適な施工計画の立案や、リアルタイムな施工現場の「見える化」といったスマートな「未来の現場」を実現していきます。

2016年3月までに、スマートコンストラクションは累計1,100以上の建設・土木現場への導入実績があります。

*文中敬称略

土木・建設業の未来を見すえて

道央を中心に土木建築業を展開する株式会社砂子組(本社:北海道空知郡、代表取締役社長:砂子邦弘氏)は、他に先駆けて土木工事の情報化に取り組み、現場からの知見を専門学会で積極的に発表し情報交換を図るなど、情報化施工のトップランナーとして道内屈指の地位を獲得しています。 同社の情報化施工現場には、多くの土木建設会社が見学に訪れます。以前はICT建機の性能やコストが質問の中心でしたが、最近は3D図面の作成方法など技術的な質問が増加。ICT施工への関心の高まりを実感されるそうです。

同社で土木工事を統括する常務取締役 近藤里史氏は、昨年から導入したスマートコンストラクションに大きな期待を寄せています。「情報化施工は土木業界の将来像だと確信しています。現場へのICT技術の導入はますます進むでしょう。そのような想定で我々が描いていた土木業界の将来像と、スマートコンストラクションの構想は完全に一致していました」。

常務取締役 近藤里史氏
常務取締役 近藤里史氏

新技術が人を育てる

現在の土木・建設現場の課題について近藤氏は語ります。「日本における少子高齢化の進展に伴って、土木業界の就業者数も減少し、熟練オペレーター数も減少しています。人材の確保と育成が重要です」。

砂子組では、スマートコンストラクションを、直面する課題への対応策と位置づけるだけでなく、さらに人材育成のツールとしても活用しています。「とりわけ若い社員にKomConnectを触らせ、研究させています。ICTに抵抗がない若い社員はシステムになじむのが早い。バーチャルなシステムから入って、リアルな現場を理解するのが得意な若者もいます。ICT施工はより多様な人材を受け入れ活躍できる場を創出し、さらにそこからICT施工のスペシャリストを育てていく「人材育成システム」の役割を果たすものと考えています」。女性が土木業界で活躍する場としても期待が大きい、と近藤氏は考えています。

スマートコンストラクション導入の現場で

スマートコンストラクション導入の現場で

砂子組が施工中の道路建設工事(総延長: 780m、掘削土量:38,600m3、盛土量:64,000m3)では、ICT油圧ショベルPC200i-10とICTブルドーザーD37PXi-23がそれぞれ2台稼働しています(2016年6月の取材時点)。また、KomConnectによる振動ローラー転圧管理(オプション)の導入も予定しています。

工事長 千葉大樹氏
工事長 千葉大樹氏

砂子組で 現場を管理されている方々は、現時点でのスマートコンストラクション導入の成果として、情報の共有化による意思決定スピードの向上と三次元データの利便性を挙げています。

「スマートコンストラクションのなかでも、現況図と計画図を比較して土量を算出するシステムは正確でとても実用的です」。砂子組の土木部土木課工事長で、企画営業部ICT施工推進室主査を兼務する千葉大樹氏は評価します。「従来の土量計算方式では、複雑な地形や、カーブが急な道路工事などで大きな誤差が生じることがありました」。また「KomConnectからは、いろいろな情報をダウンロードできます。発注者との打ち合わせにも三次元図面データを活用するようになりました」と同氏は付け加えます。スマートコンストラクションサポートセンターとのコミュニケーションでも、クラウドプラットフォーム「KomConnect」のメリットが活用されています。千葉氏は「サポートセンターとは電話で相談しますが、お互いにクラウド上のデータが見えるため、やり取りが非常にスムーズです」と評価しています。

土木部土木課工事長の佐藤和彦氏は、スマートコンストラクションの三次元計画図を実務に取り入れました。「施工現場でも、三次元の図面を使えば、オペレーターへの作業指示がより正確になると実感しています」。

ICT建機の自動掘削性能については、土木部次長 廣上伸二氏から高い評価を頂きました。「側溝作業にPC200iを使った場合、未経験者でも半日ほどのトレーニングをすれば熟練者レベルの仕事ができます」。廣上氏は、スマートコンストラクションによって、土木業の3Kイメージが払拭されることも期待しています。

工事長 佐藤和彦氏
工事長 佐藤和彦氏
土木部次長 廣上伸二氏
土木部次長 廣上伸二氏

現場と共に創る「未来」

砂子組の現場からは、日々スマートコンストラクションに対する改善要請が上がっています。千葉氏もICT施工を推進する立場として、KomConnectによる現場の「見える化」には改善の必要性を感じています。「ICT建機の作業機(刃先)の位置情報は有効ですが、非ICT建機を含む工事現場全体の稼働状況の把握は、まだまだ困難です」。

さらに「工事の受注から引渡しまでの全工程の生産性を向上するのが「未来の現場」だと思いますが、現在のスマートコンストラクションは、建機が関与する一部分の生産性しか高まっていない」と同氏は考えています。「思い描く土木現場の将来像の実現には、KomConnectの改善が不可欠です。現場の声をもっとスピーディに取り入れ、我々も驚くようなシステムに練り上げていくことを期待します」。

土木・建設における「未来の現場」への歩みは、今、端緒についたばかりです。

コマツの「スマートコンストラクション」を改善し、理想を現実にしていく原動力は、お客さまの現場にあります。

「私たちは施工業者として現場からの意見をコマツにフィードバックし、一緒に改善して、生産性の向上を目指したいと考えています」(近藤氏)。

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