スペシャルストーリー:コマツの社会貢献

コマツの社会貢献 カンボジアの地雷除去活動と復興支援

トタン張りの家屋と肩を並べるほど多くの寺院が神々しく佇むカンボジア西部。一歩間違えると悲惨な事態を招き兼ねない危険な地域として、特に住民から恐れられている場所があります。ここで暮らす人々の日常生活は、カンボジア内戦中にばらまかれた地雷の脅威と常に隣り合わせです。ここには、人を殺したり、重傷を負わせたりすることを目的として開発された対人地雷が埋められているだけでなく、数は少ないものの、重機を吹き飛ばすほどの高い破壊力を持った対戦車地雷も埋まっています。
こうした地雷原では、農作業はおろか安全な生活もままならないため、深く草木が生い茂った状態で放置されてしまっているのが実状です。それでも、国民の9割が郊外で貧しい生活を送るカンボジアでは、人々は危険区域内やその周辺で農地を耕す生活を余儀なくされているのです。

そこでコマツは、2008年に「日本地雷処理を支援する会(以下、JMAS)」への支援を通じて、地雷を除去するとともに、住民が安心して暮らし、働き、そして野原を駆け回ることのできる地域の復興を目指して活動することにしました。以来、JMASは「カンボジア地雷対策センター(以下、CMAC)」と連携してこの活動を続けています。
コマツは対人地雷を安全に処理できる対人地雷除去機(以下、地雷除去機)を開発するとともに、それをJMASへ無償貸与し、これまでに1,700ヘクタール以上の広大な土地に埋められている約1,400個の地雷を除去しました。

バッタンバン州で暮らすある女性は、地雷が取り除かれ、インフラが整備された土地の一画で、夫とともにマンゴーなどの果物や野菜を育てながら暮らしています。
「地雷が除去される前、この辺り一帯は雑木林で、みんな林に入ることを恐れていました。でも地雷が無くなったおかげで、今は安心して暮らせる安全な場所へと変わりました」(バッタンバン州の女性)
コマツは、地域の大切なパートナーとして、CMACやJMASと共に地方自治体からの要請に応え、建設機械や特殊設計された地雷除去機を使って、住民の安全と生活の場の確保に貢献しています。

「私たちは平和目的として、地雷除去機の開発にあたりました。利益のためではなく、地域のためです」(コマツ地雷除去プロジェクト室長の柳樂篤司)
コマツが地雷除去機の開発に着手し始めたのは、地雷に汚染されたアフガニスタンやカンボジアの復興が本格化した頃の2002年でした。。グローバルに事業を展開する企業市民として、私たちには助けを求めている人々を支援する使命があると強く感じたのです。日本政府からの支援を受けて開発された試作機の稼働実験をアフガニスタンで実施し、その後、現地NGO(非政府組織)へ政府開発援助(ODA)を通じて納入しました。ブルドーザーを改造して開発された地雷除去機は、前方に対人地雷を処理する特殊ローラー、オペレーターの身を守るための防護キャビン(運転席)を装備し、その外装には平和の象徴である国連カラーをイメージしてホワイト色を採用しました。
そして2008年、コマツは人力による地雷除去活動の実績を持つCMACの作業を後押しするべく、JMASの活動に参加。こうして、地雷の除去と、被害を受けた地域を復興させるためのプロジェクト、「安全な村づくりプロジェクト」がバッタンバン州で始まったのです。

コマツは地雷除去機以外にも、掘削や整地に使用するための油圧ショベルやブルドーザーを無償で提供。現在、カンボジアでは4機の地雷除去機が稼働しており、CMACに参加する現地の住民の方々がオペレーターとして活躍しています。地雷除去機を操縦することや不発弾を爆破処理する作業についてオペレーターに尋ねると、「危険を伴う負荷の大きい作業であることは確かですが、問題なく安心して作業に取り組めています」という答えが返ってきました。
「働く人々だけでなく、機械もとてもタフですよ」(柳樂)
コマツが地雷除去活動に参加したことも貢献して、カンボジアの地雷による被害者数は、2006年比で82%減少しました。

今年の3月、コマツが支援活動を行い、パートナー協力を結んでいるバッタンバン州の村を訪れると、安全を取り戻した土地に住む人々の顔には、平和と喜びの笑みが溢れていました。
「地雷が無くなってとてもうれしいです。心から感謝しています」(農家の女性)
コマツの地雷除去活動は、農村の人々の心に活力を与えることにも一役買っているようです。

コマツは更に政府や地域パートナー、住民とともに、灌木の伐採や道路建設、小学校の建設など、生活に必要なインフラ開発にも取り組んでいます。
「現地では多種多様な需要があります。多くの学校が必要ですし、学校を建設した後の維持管理も必要です。また雇用や住居地の確保など、さまざまな取り組みが必要なのです」(柳樂)
コマツは現在、地雷によって生活が脅かされていた10の村を対象に復興支援を行っています。村々をつなぐ延べ60km以上の道路を整備し、モンスーンの時期には豪雨による冠水で孤立してしまった村の復旧支援を行いました。完全に孤立した村には橋梁を、水資源がなかった村には46のため池を建設。

また、8つの小学校校舎を建て、600人近くの小学生が学校に通う環境を整備しました。「多くの子どもたちを学校に通わせたいという願いが叶いました。コマツの想いとリーダーシップのおかげです」そう話すのは、2011年に建設されたチョロノッペ・コマツ小学校の先生です。学校に通って勉強に取り組める環境が整った今、子どもたちに将来の夢について尋ねると、医者や看護師、教師、大工、警察官になりたいといった返事が返ってきます。
「子どもたちの両親のほとんどは農業で重労働に従事しています。学校に通うことは、世の中に農業以外の職業があることや、新たな世界を知る良い機会となっています」(小学校教諭)

カンボジアの古い校舎では、土床とトタン屋根が使われているため、モンスーンの季節になると雨音が教室中に鳴り響きます。雨量が多い時季になると、会話が成り立たなくなるくらいの騒音や浸水によって、閉鎖しなければならない学校も出るほどです。
一方、チョロノッペ・コマツ小学校では、頑丈な屋根と安定感のある床に机を並べて勉学に励むことが可能です。そこには、憧れの先生のようになることを夢見て、算数や国語の教科書を一斉に復唱する子どもたちの姿があります。
コマツの文字が刻まれた図書室には、日本からの支援で寄贈された多くの本が並んでいます。また日本の子どもたちから贈られた習字や折り紙も飾られており、カンボジアの子どもたちは、遠く離れた日本の子どもたちの思いも感じながら生活しています。

地雷に怯える生活が過去となった今、これからのカンボジアの未来を形づくるのは今の子どもたちです。一定の手続きを経て、無償で提供された再開発地域へと移住し、家族と安心して暮らすことが可能となった子どもたち。この新しい世代は、地雷の危険と隣り合わせの環境下で生きていく恐怖を味わう必要はもう無くなったのです。
「支援活動において重要なのは、活動が終わった後も現地の人々が自立して生活していけることです。このプロジェクトの目的は、地雷の除去だけでなく、人々の暮らしそのものを支援し、育むことにあります。政府と連携した活動を通して、生活を持続可能なものにしていくことが重要なのです」(柳樂)
10年前、バッタンバン州における地雷除去と復興プロジェクトによって、自分たちの土地を手にした夫婦は今、その大切さを噛み締めています。
「小さな土地だけれど、これは私たち自身の土地です。ここで暮らせることを本当にうれしく思います」

カンボジアにおける地雷除去プロジェクト

私たちは現在、3つの再開発プロジェクトを支援しています。

  • 「バッタンバン州における地雷除去と復興プロジェクト」-2008年開始
  • 「バンテイメンチェイ州における地雷除去と復興プロジェクト」-2017年開始
  • 「コンポンチャム州における包括的地雷除去(地雷と不発弾)プロジェクト」-2018年3月開始