プロジェクト・技術系

Project KOM-MICSプロジェクト

時代を先取りした
『つながる化・みえる化』で、
新たな次元の生産改革を
実現する。

全世界で85の生産拠点を展開するコマツ。IoTのトップランナーとして、建設機械の稼働現場と同様、生産現場においても工場設備を有機的につなぎ、生産性向上や省エネに活かすスマートファクトリーの実現を目指してきました。生産設備の状態や加工状態を見える化することで情報を一元化するシステム『KOM-MICS(Komatsu Manufacturing Innovation Cloud System)』を開発・導入し、現在も進化を続けています。

T・K(以下、K)/
2004年入社/工学部機械工学科卒
生産本部 生産技術開発センタ 先進生産技術推進プロジェクト室 制御グループ(当時)

自動化による工場の生産性向上など、大学時代から生産技術の研究に従事。社会の発展に貢献できる、難易度の高いモノづくりを行う生産技術者として成長したいと考え、コマツに入社。

K・T(以下、T)/
2014年入社/工学研究科マイクロエンジニアリング専攻了
生産本部 生産技術開発センタ 先進生産技術推進プロジェクト室 制御グループ(当時)

研究室では工作機械の運動精度を計測する技術研究に取り組む。機械の中でも巨大な建設機械への関心が高まり、大学で学んだ知識と経験が活かせる生産技術に取り組めるコマツに入社。

S・N(以下、N)/
2016年入社/自然科学研究科機械科学専攻了
生産本部 生産技術開発センタ 先進生産技術推進プロジェクト室 制御グループ(当時)

研究室ではモノづくりの基盤となる成形加工技術を研究する。研究室がコマツの関連会社と共同研究を行っていたことからコマツに興味を持ち、研究室と同じような感覚で業務に携われるところに魅力を感じて入社。

想像の域を
はるかに超えていた、
若手技術者たちの
自由な発想。

「あの瞬間の衝撃は、いまも鮮明に覚えています」。2013年のある日のことを、開発リーダーのKは語り始めた。さかのぼること数年前、生産技術開発センタにて機械加工の研究に従事しはじめたころ、職場にいるコンピューターに詳しい若手技術者に向かってこんな言葉を投げかけたことがある。「熱処理装置や溶接ロボットなどの工作機械には、制御用のコントローラーが搭載されていてプログラムに従って動作する。いわばパソコンでプログラミングをするのと一緒。だから、これをいじるような気軽な感覚で、楽しみながら何か新しいことを考えてみたら」。その時Kがイメージしていたのは、工作機械の制御プログラムを少し改良してみる、その程度だった。
その後、後輩に呼ばれて覗き込んだモニターで動いていたのは、粟津工場内に設置されている工作機械が、どのような作業にどれだけ時間をかけているのか、1台1台の稼働状況をリアルタイムで反映しているデータだった。
当時を想起し、Kはこう語った。「こんな発想があるのかと衝撃を受けました。粟津工場のデータを見て、これを有効に使うことができればより効率的に生産ができるかもしれない、と感じました。インターネットでモノを結ぶIoTを、IoTという言葉がそれほど広く浸透していなかった時代に、自分たちで発想し形にしていたのです。これは凄い可能性を秘めていると直感しました」。これが、のちに『KOM-MICS』と名付けられるシステムが芽吹いた瞬間だった。

先進コンセプトの前に
立ちはだかった、
「機械ごとの誤差」
という壁。

『KOM-MICS』により、生産現場でどんな改革が実現できるのか。
コマツの建設機械は、全国各地の生産工場と協力会社(サプライヤー)の連携の下、部品の生産から車体組立まで行っている。特に重要部品や一極生産している製品においては、生産・発送の遅れが、その後の工程での致命傷となりかねない危険性をはらんでいるのだ。そこで『KOM-MICS』を導入することで、工作機械1台1台の稼働状況をリアルタイムに把握、生産が遅れている機械や工程があれば、重点的にテコ入れし、全体への影響を防ぐことが可能となる。さらに、各工場の工作機械稼働データをデータベースで一元管理することで、まだ改善ができていない設備が見える化され、個別の加工設備での改善を類似設備へ素早く展開できるようになった。これにより、従来着手できていなかった大幅な生産性向上が見込めるようになったが、社内で前例がないプロジェクトであるため、やはり困難がつきまとった。

「早い段階で工作機械の『つながる化・見える化』は実現していました。そこから得られるビッグデータを活用し、具体的に生産性向上を実現することが私のミッションでした」。こう話すのは、2014年からプロジェクトに参加したTだ。「『KOM-MICS』のデータを解析すれば、改善すべきポイントはわかります。そこで、ターゲットになる工作機械の制御プログラムを改善し、実験施設でシミュレーションを行って効果を確認してから現場に導入しました。ところが、実験施設にある機械と生産現場で稼働する機械との誤差や使用環境の違いから想定通りに動かず、目指す効果に届かない日々が続きました」。どうすれば誤差を埋められるのか。Tは工作機械を取り扱うグループ会社に通い、改めて機械の構造を理解するところから取り組みを開始した。そのグループ会社にも協力を依頼し、仕様の変更や新たな制御方法の導入などの改善策を次々に投入。その後はシミュレーション、データ解析、プログラム改善を繰り返し、ついに、機械の止めない化・歩留り向上・トレーサビリティの確保、予知保全を実現するコマツ独自のIoT 生産支援システムを構築した。社内で高く評価されたことから、2015年6月、IoTを駆使した独自のスマートファクトリーコンセプト『KOM-MICS』は世界に向けてプレスリリースされたのであった。

職人気質と
最先端技術を融合させる
キーマンとして。

『KOM-MICS』の導入で、コマツの生産性は着実に向上している。その中でなかなかクリアできなかったのが、主力油圧ショベルの製造工程における生産性を10%改善するという目標だった。この目標達成を任されたのが、当時入社2年目のNだ。「主力機種の生産性は、極限まで最適化されていると思い込んでいましたから、10%改善という目標を聞いたときは、とんでもない話だと思いました」。

2017年4月、プロジェクトに参加したNは、最初に『KOM-MICS』データの解析に取り組んだ。まず工場間のデータを比較すると、その効率格差が一目瞭然だった。効率化が進んでいる工場のデータに改善のヒントがあると考え、その制御プログラムを、効率化を図りたい工場の機械仕様に開発し、現場に向かった。「あとはこのプログラムを導入するだけ」と考えていたNが直面したのは、工場ごとに設備仕様の細かな差異があり、一概に同一プログラムを導入できないという現実だった。さらに現場作業者の中には、これまでの生産工程を変更するやり方に必ずしも前向きでない者もいた。
そこでNは、協力企業や各工場を奔走し、地道に『KOM-MICS』の有効性について説明・説得した。Nの愚直な頑張りに対して周囲の態度も徐々に雪解けしていき、さらに現場の意見を聞く中で、生産工程そのものを改善して進化させ、さらなる効率化を図るヒントも得ることができた。こうして半年かけて導入を行い、生産性10%改善という目標を達成した。
「『KOM-MICS』はあくまでツールで、現場の人が納得して使わない限り本当の効果は出ません。大きな視点で仕事ができたこと、現場をより深く知れたことは、今後のエンジニア人生で必ず役立つと思います」。

世界を見据え、
生産改革を新たな次元へ。

そして今、『KOM-MICS』は新たな局面を迎えている。ドイツに留学し、産官学を挙げて進む「インダストリー4.0」(※)の動きを肌で感じたKが、そのエッセンスを『KOM-MICS』に導入し、全世界にスマート工場を展開させようとしているのだ。「『KOM-MICS』のデータは、毎日リアルタイムでクラウドに蓄積されています。このビッグデータを新たな視点で解析し、さらなる生産のムリ・ムダ・ムラを削減したり、より効率的な生産を実現する工程を策定するなど、現場のデータをより有効利用できるやり方を見つけ出したいと考えています」。前回『KOM-MICS』の導入に奔走したNも想いを語った。「どれだけ有効なシステムが構築できても、実際に現場が活用してくれないと意味がありません。『KOM-MICS』と現場とのバランサーとなるのが、今後の私のミッションだと思います。」

生産技術者であることに誇りを持ち、生産改革を新たな次元へ導きたいというKが、最後に想いを語ってくれた。「この『KOM-MICS』を全世界に展開して、コマツ全体で強い工場体制を構築できるよう、プロジェクトを今後もリードしていきたいと思います」。

※2011年に発表された、ドイツ政府が推進する製造業のデジタル化・コンピューター化を目指す、戦略的プロジェクト。

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